おしゃべりな百合の花
 龍一が振り返ると、


「私の父を殺して。」


 真剣な面持ちで、美百合が言った。


「はぁ?」


 龍一は目を見開いた。


「俺は殺し屋じゃない。」


 龍一は気分を害したように素っ気無く言った。


「じゃあ、何?」


 龍一は美百合を見詰めたまま、しばらく考えると、意を決したように答えた。


「政府直属の工作員。」


 今度は美百合が目を丸くした。


「そんなこと…私にしゃべっちゃっていいの?」


 恐る恐る尋ねる美百合に、


「お前が聞いたんだろ?この事、もし口外したら、多分お前、消されるだろうな。」


 そう言って、龍一は悪戯に微笑んだ。

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