おしゃべりな百合の花
 窪田に対して反抗的な態度をとった直後でバツが悪かったが、龍一は意を決して、自分の計画を窪田に伝えた。


 窪田は相槌も打たず、微動だにせず、黙って真剣に龍一の話に耳を傾けた。


 龍一が話し終わると、窪田は少しの間押し黙り、やがて、


「すぐ手配する。りゅう…くれぐれも慎重に行動しろよ。」


 あの、自分にとってカリスマ的存在の窪田駿が、何故自分なんかにこんなに親身になってくれるのか、龍一は不思議だった。


 窪田はさらに、龍一に謎の言葉を放つ。


「なぁ、一つ聞きたいんだが…」


「何ですか?」


 龍一は警戒して尋ねる。


「数十万の国民の命と、たった一人の愛する女の命、どちらか一方しか救えないとしたら、お前ならどうする?」


 窪田は龍一の目を凝視している。


 相手は窪田だ、龍一の答えが本心でなければ、たちまち見抜かれるだろう。

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