おしゃべりな百合の花
「だったら…さっさとやって!」


 美百合はそう言って、父親から顔を背けて固く目を閉じた。


 龍一はそんな美百合に静かに近付くと、美百合の手に自分の銃を握らせた。


「お前が殺れ。」


 冷ややかに龍一が言った。


「コイツの死を本当に望むなら、お前がその引金を引け。掃除屋が綺麗さっぱり証拠を消してくれるから、後の事は心配しなくていい。」


「嫌よ。出来ない。あなたがやって。」


 美百合は激しく首を左右に振った。


「俺はやらない。めんどくさい。」


 あの、美百合が襲われた日に見た、冷酷な龍一がそこに居た。


「できない…。」


 美百合は銃を握ったまま、とうとう泣き出した。

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