おしゃべりな百合の花
 女を泣かすのは趣味じゃないが、今日のところは仕方がない。


 龍一はそんな美百合に、手を差し伸べることはせず、少し離れた位置からただ見守った。


「大好きなの…パパ…もうあんな事やめて。」


 迫田の目からも大粒の涙が零れ落ちた。


 龍一は迫田の顔の前にしゃがむと、迫田の口を塞いでいたガムテープを、右手で一息に剥がした。


「すべてを捨てる覚悟はあるか?地位も名誉も、もちろん仕事もだ。」


 龍一は迫田に問いかけた。


 その顔にも、声にも、一切感情はない。


 これが仕事モードの龍一だった。


「ああ、何もいらない。私は美百合さえ傍に居てくれたら、それでいい。美百合は私の全てだ。」


 迫田が訴えかけるように言う。


「嘘よ。」


 美百合が泣き濡れた顔で迫田を睨みつけ、両手で迫田に向かって銃を構えた。

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