おしゃべりな百合の花
「ずっと、尾藤に脅されていた。仕事を断ったら、お前を殺すと。すまない…美百合…本当に…」


 迫田の謝罪の言葉を聞き、美百合は力なく構えた銃を下ろした。


「美しい家族愛…泣けるねぇ…」


 その場に居た全員が声のする方を振り返ると、尾藤の一人息子、尾藤信也が姿を現した。


 龍一が、美百合から自分の銃を取り戻す前に、信也が美百合に銃口を向けた。


 龍一は反射的に動きを止め、硬直した。


「はい、おりこうさん。」


 そう言って、信也は美百合に狙いを定めたまま、ゆっくり美百合に近付く。


「この前の裁判のお礼に寄ったらさぁ…愛しの美百合ちゃんが居るじゃない!?」


 美百合の手から龍一の銃を奪うと、信也はそれを自分のジーンズのウエストにねじ込んだ。


 右手に持った銃は、なおも美百合を捕らえている。

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