おしゃべりな百合の花
「私、明日誕生日なんです。」


「それが俺に何の関係が?」


 なんとなく言わんとすることは想像できたが、もちろん、龍一はあえて冷たく突き放す。


「なので、デートして下さい。」


 龍一の思惑とは真逆の反応に、再び深い溜息をついて、彼女の願いに対する返事に代えた。


「あなたの気持ちは、毎朝の態度でわかってます。私に脈なんかないんですよね!?」


 悲しい事実を口にしているのに、何故か彼女は、はにかむように笑っている。


「明日一日付き合ってくれたら、あなたのこと、綺麗さっぱり諦めます。」


「断ったら?」


 全く表情を変えることなく、龍一は尋ねた。


「明日から毎朝、話しかけます。」


 そう元気に宣言し、彼女は満面の笑みを見せた。


「明日から店変える。」


 龍一は、そんな毎朝を想像してか、たちまち顔を曇らせて言った。


「他にいい店があるなら、もうとっくにそうしていたはずです。あなたの条件に合う店は、ここの他にない。そうですよね?」


 彼女は平然と、きっぱり言い切った。



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