おしゃべりな百合の花
 そうしたまま、美百合は小声で囁いた。


「オバサンになる前に、必ず迎えに来て。」


 龍一はその言葉に、軽く声を出して短く笑うと、


「50年後までには行けるかな。」


 からかうように言った。


「そしたら私、お婆さんじゃん!!」


 龍一から顔を離し、美百合が膨れて言った。


「心配するな。俺もお爺さんだ。」


 龍一はそう言って優しく微笑むと、抱いている美百合を、そっとセスナに乗せた。


 止め処なく涙を流す美百合を、愛おしく見詰めながら、龍一はセスナの扉を静かに閉めた。

< 83 / 85 >

この作品をシェア

pagetop