おしゃべりな百合の花
 龍一が後ずさってセスナから離れると、セスナは滑走路を走り出した。


 セスナはゆっくりと機体を浮かせ、そして、空高く舞い上がる。


 龍一は一人、その広い敷地に立ち、セスナが見えなくなっても、セスナを呑み込んだ黒い星空を、飽くことなくいつまでも眺め続けた。






 機内では、美百合が龍一を想ってしくしく泣いていた。


 迫田が何も言わず、そんな美百合の肩を抱く。


 そして美百合は誓うのだった。


 りゅういちが迎えに来てくれるまで…




 りゅういちが愛してくれた、この『おしゃべり』の腕を磨いておこう…




 と。


 何をどう間違ってしまったのか…


 どうやら、美百合はとんでもない勘違いをしているようだ。






        h22.06.08
       【おしゃべりな百合の花】Fin.

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