致命的フェティシズム【BL】
 
 一歩、一歩、と、アイツが俺に近寄る。

 背中が壁にぶつかり、逃げ場を失った俺は、ネクタイを掴まれて引かれるままに背を屈める。


『なんで、逃げるの?』


 上目遣いの大きな瞳。

 薄暗い室内でもキラキラ光って見えるそれは、俺を捕らえて放さない。


『俺、先生のこと好きだよ……』


 俺よりも背が低いアイツは、軽く背伸びをして俺に口付ける。

 一度触れてしまえば離れがたくて。

 もっと、もっと、触れていたくて。

 駄目だと警鐘を鳴らす理性に反して、身体は目の前のコイツを求めてしまう。

 自分よりも、一回りも二回りも小さな身体を抱き締めて。

 何度も、何度も、繰り返し、キスをする。


 伏せた長い睫毛も。

 その奥の瞳も。

 赤い唇も。



 ヤバイくらい愛しくて、可愛くて。

 キスを交わしながら絡む視線は、その可愛さに反して酷く攻撃的で。


 俺はその瞳に──堕とされる。
 
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