カプリッチオ症候群
どうして…こんな時に。
あたしは一瞬だけど剣斗に迫られているとき、教室に入ってきた嶺と目が合った。
それは優しく温かい瞳ではなく、冷たくあたしを拒絶するかのような冷めた瞳。
「あ………」
手が震えて声も出ない。
違うの…嶺。
あたしが好きなのは嶺だけなの。
「…アイツ…また女に…」
隣で嶺に苛つく剣斗がつぶやく。
でも、そんなこと気にしていられない。
どうしよう…軽い女だって思われた?
今のやりとり聞かれた?
ぐるぐると不安が頭を混乱させる。
違う。
そう誤解を解きたいけど足が踏み出せない。
別に気にしてないから
それに…僕、南波さんの事なんて好きじゃないよ。
そうやって、
拒絶されるイメージが頭の中で出来上がってしまっている。
「……嶺…」
「ゆえ?…お前…泣いて…」
涙が止まらない。
涙腺はもう破壊されていてただただ泣くことしかできない。
いつからこんな弱虫になんだんだ、あたしは。
嶺の事になるといっつもそうだ。
ネックレスを握り締める事しかできない。
――ドクン!!
「…っ!!!」
頭が急に激しく痛みだす。
ガンガンして…うまく思考がまわらない。
…だめ…だ。
倒れる………………。
「嶺……」
それを言ったのを最後にあたしは意識をそこで手放した。