カプリッチオ症候群


「…あなたを泣かすのは…藤原くんなの?」


 先生が驚いたように聞いてくる。

「…はい……」


「でも…彼がここまで南波さんを運んだのよ?そりゃもう血相変えてね」


 う、そ…………

「…よっぽどあなたが大切なんだろうなって…ちょっと羨ましかったのよ?」


 クスクスと可愛い笑顔で笑う先生の言葉が信じられない。

 ……嬉しい、嬉しいけど。
 どうして?


 嶺はあたしの事、好きじゃないんでしょ?
 放っておいたらよかったのに。


「…う、…ひく……」


 そんなことするから余計に分からなくなる。

 どうして…
 忘れなきゃって思うたびに、貴方はこうして混乱させる。


 ネックレスだって……






 サァ――
 と、一瞬血の気が引いた。

 無い。ナイ。
 嶺から預かったネックレスが無かった。


「先生!ネックレスは!?」


「え?ネックレス?」


「あたし、手に握ってなかった!?」


「さあ…分からないわ」


 どうしよう…無くした?

「ベッドの下にもないわよ?」

 先生が色んな所を探してくれている。

 あたしも必死で探すけどどこにも無い。


「……南波さん…もう下校時間過ぎちゃってるから今日は帰りなさい。あたしが探しとくから」


「でも……」


「ダメ。今日はゆっくり家で休みなさい」


 そう先生に言われたからオレンジ色の校内を一人、教室に向った。



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