カプリッチオ症候群
勿論のこと誰も教室には居ない。
早く帰ろうとあたしは帰る支度をして教室を出た。
「……………」
ふと、嶺の席が目につく。
……遠い存在…。
ため息を一つ吐いてあたしは家路を急いだ。
――あれから数週間
あたしと嶺の間では何の進展もない。
まだ、別れも言ってない。
いざ言うとなると足が動けなくなる。
進展はなし。
ただ分かったことは、
あたしと嶺の溝はより一層、深まった。
それだけだ。
「あ、嶺くんネックレス付けてるー!」
え?
「いいでしょ?」
ニコッと笑顔を振りまく嶺の首元にはあたしが握っていたネックレス。
無くしたと思ってたのに、嶺が持ってたんだ…。
何故か、凄く淋しくなる。
元々は嶺の物だから仕方ないんだけど…。
唯一の繋がりが無くなってしまった。
「ゆえ!明日誕生日だよな?」
「え…?」
そういえばそうだ。
剣斗に指摘されて初めて気付く。
あれ以来、剣斗はおとなしくなると思いきやその逆。
「二人でどっか行く?」
こんな感じで攻めてくるようになった。
「行かないよ」
どうせなら嶺がいい。
嶺なら喜んでいくのに。
「あー!あたし、明日誕生日なんだぁ!」
一際目立つ容姿の女の子、亜優ちゃんの声が響く。
いつも嶺の近くに居る子だ。
「うん。知ってるよ」
「本当にー!!嬉しい!」
「プレゼントには何が欲しい?」
「きゃーっ!くれるの!?」
「もちろん」
「あたし、指輪がいいー!」