カプリッチオ症候群
「指輪?いいよ」
「本当ー?でも彼女さんに悪いよねぇ?」
――ドクン
まさかあたしに話を振られるとは思ってもみなかった。
亜優ちゃんと女の子達の視線が鋭くあたしに突き刺さる。
「え…あ…………」
突然の事で何を言っていいか分からない。
嶺はめんどくさそうにため息を吐く。
「南波さんは……関係ないよ」
……え?
頭が真っ白になる。
庇ってくれると、ほんの少しでも期待したあたしが馬鹿だった。
結局、嶺の何にでも無いんだ。
あたしは。
「ごめんねぇ、ゆえちゃん?」
クスクスと嘲笑う声が聞こえる。
……あたし、何かしたの?
嶺は、あたしにこんな思いをさせるために付き合ったの?
もう、いい。
あたしは耐えきれずに教室を飛び出した。
「ゆえ」
「………っ!!!!!」
どうして、
嶺があたしの腕を掴んでるの?
飛び出して人気の少ない廊下で呼び止められる。
恐る恐る振り向くと、無表情の嶺がいた。
息切れの一つもしてない。
「は、なして!!」
「……………」
嶺は離そうとはせず、余計に強く握る。
「どうして、今更追い掛けてくるの!?放っといてよ!あたしは嶺と無関係なんでしょ?
この間の電話も!そのネックレスも!全部全部、あたしが好きじゃないからそんなことするんでしょ!?……どうして…」
滝のように流れる涙は、限界を知らないかのように。
ただ哀しくて、苦しくて、悔しくて、
「…どうして付き合ったの?」
「………………」