カプリッチオ症候群

_鳴らないケータイ電話



 5限目。
 どうも眠くて仕方ない。
 しかも国語の古文の授業ときた。

「ここのをかしの部分は…―」

 もはや古文はおろか現代仮名遣いまで呪文に聞こえる。


 けっ、紫式部さん。
 よくこんなのがかけるな。


 と、なんとなく感心してみる。

 これだけ呑気だと悩み事なんてないと思われがち。
 そんなことない。
 悩み事ありありだ。


 それはあたしのカレシに問題があるのだ。


 隣のクラスの藤原嶺


「はぁぁー」


 考えただけでため息がでてしまう。
 
 どうして…こうもあたしは…。
 うん。わかんない。
 もうやだ。

 いつもこうして自己嫌悪に陥る。

 勿論、嶺のことは好きだ。
 いや、大好き。

 彼が初めて本気になれた人だ。
 だから彼から告白されたときは嬉しくて嬉しくて、夢のようだったのに。


 今は相思相愛では全くない。

 元々かなりモテる容姿の嶺。

 綺麗な黒髪に整った顔立ち。
 誰にでも優しくて、風紀の委員長だ。おまけに学年首席で先生ウケもかなりいい。勿論、運動神経も申し分がないくらいにいい。

 こんな完璧な彼を放っておくわけがないだろう?
 花の女子高生が。


 ま、ここまではいいとして。

 問題は彼女のあたしが何故か嶺に嫌われている。

 これ、主語間違ってませんよ。

 付き合いだした頃からあたしだけに無駄に冷たくあたるようになる。

 好きだから冷たくしてしまう。

 そんな可愛いものじゃないと思う。
 だって、他の子には優しいし、特別優しくしている子だっているらしい。


 …絶対におかしい。


 あたし…嶺に嫌われてるよね?どうして付き合ってるんだろ?




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