カプリッチオ症候群
滅多にあたしのクラスに来ない嶺が来ている。
周りに女の子を引きつれて。
チクン――
やっぱりいつみても苦しい。
あたし以外の女の子にあんなに優しい笑顔みせてる。
って。一度もそんな笑顔あたしに向けられた事なんてないのに。
なんだかひとりだけ舞い上がってるみたいで虚しくなる。
「これ可愛いね」
「え!本当に?嬉しい!!嶺くん大好き!」
――大好き。
あたしだって凄く言いたい。
でも、返ってくる返事が怖くていつも言えない。
あたしはそんなに目立つ容姿でもないし、体型も凄く普通。
何の取り柄もないあたしが、嶺と釣り合えるわけがない。
だから…何にも言えない。
我ながら情けないなぁ。
こんな所じゃ教室にいるどころか寝れない。
ワイワイ嶺の周りで騒ぐ女の子達を羨ましく思いながらあたしは椅子から立ち上がる。
「ゆえ!!一緒に職員室来てくんねぇ?」
急に腕を捕まれて剣斗に呼び止められる。
「なんでよ」
「荷物。手伝え」
雑用かよ。
暇だし教室から出れるのならいいや。
あたしはチラッと嶺を見る。
なーんて。
嶺はあたしの事なんか気にしてないか。
「いいよ。行こ」
あたしはため息を一つついて剣斗と一緒職員室へ向った。