カプリッチオ症候群


 あたしは放課後、嶺の居ない隙を見計らって嶺のカバンに入れた。

 手紙を。


 内容はいたってシンプル。

 ―今日、何の日か分かるなら夜電話ください。



 もし、これで掛かってきたら、あたしの気持ちをきちんと伝えよう。


 でも……掛かって来なかったから。


 その時はあたしから「さよなら」を言う。

 これ以上、辛いのは嫌。

 嶺だって、あたしが彼女だったら恥ずかしいだろう。

 だから……別れる。






「……何やってるの」


「っ、嶺!」


 いつの間にか嶺は帰ってきていた。

 き、気まずい…。


「何か用?」


 スッとあたしの隣を通り過ぎて冷たく刺さる言葉を言う。


「あ、…手紙…カバンに入れといたから…見といてね……じゃあ!!」








 …逃げてしまった…。
 呆れてるかな…嶺。


 でも…これで多分、手紙はちゃんと見てくれるよね?


 後は…待つだけ。


 あたしはケータイを強く握り締めた。



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