カプリッチオ症候群
―PM8:00
まだ、嶺から電話は掛かってこないでいる。
きっとまだお風呂に入ってる。忙しいんだよ。
と、自分を言い聞かせて待っている。
ケータイに穴が開くくらいにじーっと見つめる。
お願い。掛かってきて。
―別れたくなんかない。
でも一向に電話は掛かってこない。
もう12時前だ。
嶺…嶺、れい!!
あたしの目からは涙が零れ落ちる。
12時過ぎ。
ケータイは鳴ることはなく、もう日付が変わってしまった。
嶺は覚えてなかったんだね。
「……っ、ひく…れ、い…」
寝るにも寝れず、あたしは手のひらにネックレスを握り締めていた。
付き合う前の頃、体育の時間はネックレス禁止で見つかると取られちゃうからって言ってあたしに預けていた。
唯一、あたしと嶺を繋ぐものだけど。
返さなくちゃ……。
ごめんね。
貴方の重荷だけにはなりたくないの。
彼女らしいこと一つもしてないけど、
少しの間でも、貴方の彼女でいれた事が何より幸せです。
―別れよう
あたしから手放すのに、こんなにも愛しくて苦しくなる。
我儘だね。
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