カプリッチオ症候群
嶺の事はうまく進んでいるといつも剣斗に嘘を吐いていた。
…目が腫れてたし…
「いや、違うからね!」
「そーかそーか、素直に言えばよかったじゃねぇーか」
は、はい?
何を笑顔で言ってんの?
「…アンタなに言ってんの?」
「何って…俺のことが好きなんだろ?」
はぁぁあ!?
アンタはどんな思考してんだよ!
あたしが病んでるっていうのに…全くめでたい奴だ。
「まったくもって、それはアンタの勘違い!」
「いやー、恥ずかしがんなってゆえ!俺らの仲だろ?」
いやいやいや。
何時からどんな仲になった?
てか。
「恥ずかしがってない!好きじゃない!」
「丸わかりだし」
「だから違うって!!」
あたしが好きなのは、この世で嶺、一人だけなんだから!!
すると突然、剣斗が迫ってくる。
な、なに?
「けん、と?」
「ゆえ…嶺なんて忘れろ」
え………?
剣斗の顔が何時に無く真剣で…ドキッとする。
でも…嶺じゃなきゃ…
って、ちょ、待って!!
なにする気!?
まだ嶺とキスもしてないのに!!
「や、やだ!!」
「あー、嶺くん!おはよう!」
――ドクン
「…チッ…」
剣斗の舌打ちを脳の片隅で聞いて…あたしはそこから動けなくなった。