この青空を君へ。
唇が、指が、体全部が震えている気がした。

震えていたのは私の方なのか、亮の方なのか・・・


雨はますます強く私たちの体を打った。



ガサッ

何かが落ちる音がして私は振り向いた。


そこにいたのは元樹だった。


「もと・・・」

名前を呼ぶ前に元樹は反対側に向きなおして歩き出してしまった。


「亮くん!離して!」

私を抱く力が強くなる。

「離してよ・・・お願い・・・」


亮は何も言わずただ強い力で私を抱いた。

歩き去っていく元樹の後姿を目で追って、私は泣いていた。



元樹が見えなくなった頃、ようやく亮の腕の中から開放されて、私は少しふらふらしながらも彼が立っていたところへ歩き出した。


そこには紙袋が落ちていて、その中には大きな封筒がひとつ。

雨で滲んだ文字だけど、そこには「千春へ」と書かれていた。


私はその封筒を手に持って、後ろを振り返った。


亮は私を見ているだけ。

悲しい目で。でも強く。そして優しく。




私は封筒がこれ以上濡れてしまわない様にしっかりと抱いて走り出した。
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