この青空を君へ。
元樹はゆっくりと私たち二人の前に歩いてくる。

「それは違うよ、ミサト。苦しんだ時間はもう終わってるんだ」


微笑む元樹の顔。


「俺にいろんな気持ちを教えてくれたのはミサトだ。自分勝手で子供だった俺を許して欲しい。」


「自分勝手で子供だったのは私の方なのに・・・」

ミサトは泣いていた。

私にはミサトが幼い少女のように見えた。


「あの時・・・ここに来なくてごめんね・・・私、元樹の顔見たら『さよなら』なんて言えないと思ったから」


元樹はどこまでも優しい表情で、私は胸の奥がぎゅっとなるのを感じる。


「ずいぶん時間たっちゃったけど、ちゃんと言ってくれる?」

ミサトは頷いて、涙をぬぐってから真っ直ぐに元樹を見た。


「元樹、ありがとう・・・・・・『さよなら』」

「うん。ありがとう。ミサト」



そして、彼女は急に立ち上がって私の方に向き直りとびきりの笑顔を見せた。

「千春!私帰るね!」


そう言って立ち去るミサトに私は何も声をかけられなかった。
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