あいつの頭の中(仮タイトル)
ベッドの上の男に不信感を抱き、背を向けないよう、壁を伝って玄関に向かった
「あの、どちら様ですか?」
「この部屋の管理人の小林です」
管理人?
じゃああのベッドの男は…?
「えっと、今開けます」
扉を開けると、見覚えのあるおじさんがいた
安心して緊張していた顔が緩んだ
この小林さんに今、家の中に知らない人がいる状況を、対処してもらおう
「丁度よかった…あの、中に今知らない人が…」
「ああ、大丈夫です、私急ぐので、お気持ちだけで結構です、早朝からすみません、出勤前しか時間がとれなくてね、このご時世一件一件を大事にしないといけませんしね、ハハッ、今日はこの書類を先日渡し忘れたので、持って参りました」
「あの、でも…」
小林さんは早口で、自分の用をまくしたてる
「心配はいらないですよ、何かあったら私にご連絡下さい、電話番号はそちらの紙に書いてありますので」
「いえ、だから」
「ハッハッハッ、ではまたお伺いします、施錠はしっかりとして下さいね」
バタンと扉を閉めて、小林さんはさっさと去っていった
くそ小林、全然役に立たないじゃないか
書類を棚に片付けて、部屋に戻る
もう一度男を見ると、寝返りをうって、うつ伏せになっていた