あなたが愛しくて...
―ガラガラ
教室のドアの開く音がした。
莉子だった。
じっと見ていると、莉子と目が合う。
でも、莉子はすぐに目をそらしてしまった。
綾の方もどこかよそよそしい態度。
「綾ちゃん、どうしたんだろ〜。」
手をふっていたのに無視をされた望は少し落ち込んでいる。
莉子たちの席の方へと向かう望についていく。
望がどれだけ話しかけても綾と莉子はそっけない返事を返すだけ。
「何かあったのか?」
明らかに昨日と態度の違う莉子に違和感を感じた。
莉子が何かを言いかけると綾が突然怒り出し、教室を出ていってしまった。
莉子は、心配そうに出ていく綾を見ながらも、追いかけなかった。
そのまま、席を立ち上がろうとする莉子の腕を掴んだ。
ビクッとする莉子。
理由を聞くまでは離さないつもりだった。
それが通じたのか、息をはき、ポツリポツリと話始める莉子。
莉子も綾も知っていた。
俺と望に女がいることを。
思わず手を離してしまう。
そのまま教室のドアへと向かう莉子。
女がいるってことを莉子にバレていた、それが何よりも堪えていた。
「人の男に手出してんじゃねぇよ!!」
ただ呆然としていると、教室のドアの方から咲の怒鳴り声が聞こえてくる。
朱里の嘲笑う声も聞こえ、ドアの方に目を向けると、出ていったと思っていた莉子の姿があった。
莉子は咲の胸ぐらを掴み殴りかかろうとしているところだった。
止めようとすると、それよりも先に、雄平が止めにはいる。
莉子を連れて、その場を去っていく雄平を見送る。