水音
時計はPM9時52分。
あたしは港に来ていた。
快と初めて会った場所…
携帯を開く。
【もぅ着いたょ☆来たらカキコしてネ】
誰も来ないで…
快だけは来ないで…
【もうすぐ着くよ!】
鼓動が高鳴る。
その時、1台の白い車。
運転席には見慣れた影。
しばらく身を隠していたあたしは、車へ近づき勢いよくドアを開けた。
何も考えていなかった。
頭は真っ白。
「…ッ」
「…ゆ…な…?」
「最低…!」
鳩が豆鉄砲くらったようなとはこの事だろう。
快は動けず、あたしは一言残し走った。
思い切り走った。
こんなに走ったのは、高校の体育祭以来だと思う。
心臓が飛び出そう。
走ったせいだけではない。
苦しい…
悔しい…
快の車が追い掛けて来たけど、民家の間を抜け撒いた。