水音
†カサブタ†
もう家へは帰れない。
どうしよう…
携帯のバイブは鳴りっぱなし。
気がつくと、あたしは店の前に立っていた。
携帯の電源を落とし、扉を開く。
カランカラン…
「いらっしゃい…って悠奈ちゃん!?」
「こんばんはぁ、飲みにきました!」
店にはコウさん一人。
「平日だからかヒマだょ。健太もさっき帰したトコ。ちょうどいいし、悠奈ちゃんの貸しきりにするべ!」
コウさんは扉の前の札を「close」にした。
「いいんですかぁ!?」
「どうせ今夜はもう来ないっしょ?オレも一緒に飲みたいし♪」
行き場のないあたしは素直に甘える事にした。
まずはビールで乾杯。
海外のお洒落なビンのビールだ。
それから、いろんなカクテル、ワイン、ウィスキー、焼酎までお店にある物を一通り味見した。
あたしもアルコールは弱い方ではない。
でも、コウさんはそれ以上に顔色変えることなく、飲み続ける。
ザルってこういう人を言うんだと、あたしは納得していた。