水音
海辺の街もすっかり冬模様の頃、

「オレ仕事辞めたから。」

突然の快の言葉。

驚いたし、先に談してくれなかったのが少し悲しかった。

不安にもなったけど、前から仕事に対しての愚痴は多かったから、

「じゃあ、早く次の仕事見つけてネ!」

とだけ言った。



でも、なかなか仕事は見つからなかった。

というより、快は本気で探してたんだろうか…


職案に行くと言いながら、パチンコへ行った日もあった。

さすがにあたしのバイト代で二人分の生活費は稼げない。

あたしの不安とイライラは募る一方だ。

ケンカの絶えない日々。

でも、別れるという選択肢はなかった。

あたしはまだ元に戻れると信じていた。

ケンカをしても、仲直りをすると優しいキスをくれる。

それが本当の快の姿だと信じていた。



男女の間って単純だ。

体を重ねれば、仲直りでき、そればかりか絆が深まった気さえするものだ。

錯覚だとも気づかずに。







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