甲子園の奇跡
帰り際、諒大が買ってくれた缶ジュースを飲みながら、2人で歩く。


「明日から練習、見に来ていいよ」

「言われなくても行くけどね」

てか、来ていいよ、とかなんで上から目線?

ちらりと横目で軽く睨みむと、諒大は気持ち悪いくらいの笑顔。


「な、何?」

「いや、あの…明日から一緒に帰らない?」

「いいけど…なんで?」

問いかけると、諒大は言葉を濁し答えづらそうにして、顔を伏せた。

と、思いきや、急に顔を上げ、あたしの腕をぐいと取り、顔を覗き込んでくる。



何?何なの?駄目だよ!

あたしには好きな人がいるんだから!


「諒大、やめ…」

「明日から俺のキャッチボール、付き合ってくれない?」


キャ、キャッチボールですか。

ははっ。あたしったら何を勘違いしてるんだか。


自分の勘違いぶりに恥ずかしくなって赤くなった顔をごまかそうと、あたしは大げさに振舞った。


「キャッチボール?何であたしが!」

掴まれた腕を振り払い、少し前を歩くと諒大の方を向いて声を張り上げる。


「もうすぐ春季大会だし、みんなには付き合わせられないから。毎日帰りは送りつきの、ジュース1本でどう?」

「いいよ。付き合ってあげる」


仕方なさそうに答えると、諒大は歯を見せながら嬉しそうに笑った。
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