甲子園の奇跡
『大丈夫なの?』

ここで突然声を掛けてきたのは諒大。

心配そうにあたしの顔を覗き込む。


「大丈夫って何が?」

「いや、なんでもないっ」

言葉の意図が分からなくて首を傾げるあたしを見て、諒大は慌ててごまかしたみたいだった。



諒大の視線の先―――

手を繋いで、ゆっくりと帰って行く倉持先輩と凛さん。


「心配してくれてるの?大丈夫だよ!もう好きじゃないし」

「それならいいけど…無理するな…よ?」

「諒大、しつこいよ?」

「…ごめん」

少し怒ったフリをして見せると、諒大は申し訳なさそうな顔をして頭を下げた。


何それ?調子狂うんですけど。


どうして今日はそんなに優しいの?

どうして謝ったりする訳?


慣れなくて気持ち悪い!



『じゃあ諒大が慰めてよ。あたしと付き合って』


なーんてね。

ちょっとからかってみただけー。

なんで俺が!とか言って怒られるのは目に見えてるんだけど。


「諒大?」

「あー。えっと…心?それ、本気で?」

「まさか!冗談に決まってるし!」

「だ、だよなっ!そろそろ帰るか」


え?あたしの冗談はスルー?

やっぱり今日の諒大は変だ。

試合前で気持ちが落ち着かないとか?

マネージャーって大変だもんね。
< 19 / 37 >

この作品をシェア

pagetop