甲子園の奇跡
試合は味方打線の援護を貰った倉持先輩が緩急(カンキュウ)をつけた投球で凡打を誘い、清稜高校は3-1で明日の決勝戦に駒を進めた。


試合後、他の観客から一足遅れて、あたしは甲子園球場を後にした。

諒大達野球部は明日の決勝戦に向け、今頃は宿舎に向かってるとこだろう。


今掛けたら繋がるかな?

携帯のリダイアルから番号を呼び出し、通話ボタンを押した。


プルルルル…プルルルル…プッ―

「もしもし?」

受話器ごしから聞こえる声。


諒大と話したのは29日の夜以来だから、随分と久しぶりな気がする。


少し話して電話を切ると、

『奈々、ごめん。先に帰ってて。あたし、ちょっと用事できたから』


一緒にいた友達の奈々に早口でそう言うと、あたしは今来た道を引き返した。
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