甲子園の奇跡
―――4月。

清稜高校、校庭の桜は満開だった。


紺色のブレザーにチェックのスカート。真新しい制服。

入学式を無事終え、清稜高校の生徒として新生活をスタートさせた。

クラスに仲良しの友達もできたし、後は彼氏ができるだけだなあなんて、あたしは胸を大きく膨らませていた。


そんな中、行われた『新入生歓迎会』

入学直後の新入生に早く学校生活に慣れてもらおうと、生徒会が企画している行事。

メインは3年生による各部活の紹介だった。


「心は何にするか決まった?」

「どうしよ。でも運動部はパスだなあ」

友達の奈々とこんな会話をしながら視線を前にやる。

あたしは1人の男子生徒に目を奪われた。



「心?」

「しっ!黙って!」

突然黙り込んだあたしに奈々が不思議そうに話掛けてきたけど、それを阻止。


壇上の上には野球部。

ユニフォームに身を包んだ3年生が、キャッチボールやトスバッティングなどを紹介。

キャプテンらしき人がマイクを持って、部の説明を始めた。


『練習はハードですが、楽しみながら明るい雰囲気です』

彼の話す言葉をしっかりと聞きながら、あたしは終始見つめたままだった。
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