甲子園の奇跡
―――放課後
教室の机の中に携帯を忘れたのを家に帰ってから気づいて、こっそり夜の学校に忍び込んだ。
ギリギリ部活がやってる時間だったけど、外は暗くなってる。
1人で帰るの嫌だなあと、ふと辺りを見渡しながら、横に広がるグランドをネットごしから見つめた。
誰かいる。
グランドの明かりは消えているけど、人の気配がした。
好奇心旺盛なあたしは無断でグランドに入り、ゆっくりと傍まで歩み寄った。
真剣な表情で投球練習をする1人の男子生徒。人目を避けるかのように隅の方で。
ピッチャーかな?
投球体制に入っていた彼は、あたしと目が合った瞬間に"それ"を止め、見つめながら口を開いた。
「何?」
筋肉で引き締まった体に坊主頭。
「野球部の人ですよね?」
「そうだよ」
グローブを右手から外して彼は答えた。
「あのー。野球部って女のマネージャー
取ってないってほんと?」
まだ諦めきれなくて、監督が駄目って言っても野球部員がいいって言えば…と、最後の望みを賭けた。
ところが。
「あー。お前1年?うちは昔から部に男のマネージャー1人って決まってるの。それにマネージャーって俺だから」
え?
聞いた瞬間、何か敵対心のようなものがあたしの中で芽生えた。
こいつが…
こいつがいるからあたしはマネージャーになれないんだ。
教室の机の中に携帯を忘れたのを家に帰ってから気づいて、こっそり夜の学校に忍び込んだ。
ギリギリ部活がやってる時間だったけど、外は暗くなってる。
1人で帰るの嫌だなあと、ふと辺りを見渡しながら、横に広がるグランドをネットごしから見つめた。
誰かいる。
グランドの明かりは消えているけど、人の気配がした。
好奇心旺盛なあたしは無断でグランドに入り、ゆっくりと傍まで歩み寄った。
真剣な表情で投球練習をする1人の男子生徒。人目を避けるかのように隅の方で。
ピッチャーかな?
投球体制に入っていた彼は、あたしと目が合った瞬間に"それ"を止め、見つめながら口を開いた。
「何?」
筋肉で引き締まった体に坊主頭。
「野球部の人ですよね?」
「そうだよ」
グローブを右手から外して彼は答えた。
「あのー。野球部って女のマネージャー
取ってないってほんと?」
まだ諦めきれなくて、監督が駄目って言っても野球部員がいいって言えば…と、最後の望みを賭けた。
ところが。
「あー。お前1年?うちは昔から部に男のマネージャー1人って決まってるの。それにマネージャーって俺だから」
え?
聞いた瞬間、何か敵対心のようなものがあたしの中で芽生えた。
こいつが…
こいつがいるからあたしはマネージャーになれないんだ。