甲子園の奇跡
「心はどうしてマネージャーやりたいって思ったの?」


入部は認めてくれないのにそんな質問してくるんだ?

とは思ったけど、一応答えてみる。


「センバツの試合、テレビで見てたの。カッコイイなあと思って…」

センバツの大会で背番号【1】をつけてた彼と、部活紹介の時に話してた彼に近づきたいから…というミーハー的な気持ちは隠した。


すると、諒大は複雑な表情を浮かべて、「センバツ…ね」と言った。


「負けちゃったけど決勝戦までいったし、決勝だって1点差だったじゃない?」

「…1点が重かったんだよ。あの大会…監督に連れていってもらったようなもんだから」

そう呟いた後、諒大は何かを思い出すように話し始めた。



「去年、不祥事で監督と部長が変わって、不祥事を起こしたのは俺らなのになんで監督が…って全然納得いかなくて。学校にもムカついて全員で練習をボイコットしたり。なのに、今の監督が「俺がお前達を甲子園に連れてってやる」って見捨てないで励ましてくれたから。センバツは…監督が連れてってくれたんだ」


センバツの試合に勝ち進むごとにチームがまとまって、それまで監督と選手の間にあった溝が段々と埋まって…

「決勝戦、負けたけどあの時みんなで決めたんだ。今度は俺らが監督を甲子園に連れてくるって。だから甲子園の砂も持ってこなかった」

真剣に力強く言う諒大。

本当に野球が好きで、チームが好きで、監督が好きなんだってのが伝わった。


でも、じゃあどうして?

諒大はマネージャーをやってるんだろう。

チームの勝利につながるようなプレーをしたいと、普通なら思うんじゃないかな?


まだ野球のルールとか、なんとなくしか分からないけど、あたしは疑問に思った。
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