Promise at Christmas
男を送りに行った未来がすぐに戻ってきて「ごめんね」と言いながら席に付く。


「愁君、なんだって?」

身を乗り出して智帆は未来を問いただす。


「夜に電話するって」

「良かったね。明日、色々教えてよ」

「う~ん。でも本当に掛かってくるかなぁ…」

「未来は変に考え過ぎなの!大丈夫だって」


そんな会話を交わす2人の横で、俺は話に全く興味がないといった風にテーブルの上に置かれたグラスの水を口に含むが、実際は一言一句聞き漏らすことなくじっと耳を澄ませて聞いていた。



「注文決まった?」

しかし、これ以上話を聞いていても自分が辛くなるだけだと思った俺は2人の会話に割って入り話を中断させる。


各自食べたい物も決まりオーダーしようと店員を呼んだ時、ここで智帆の携帯が鳴った。


「お兄ちゃん、未来ごめん。…あたし用事できちゃったから今日は2人で食べて?お兄ちゃん、帰りは未来を家まで送ってあげてね。ごめん!」

こっちの意見など聞かずに智帆は早口で言いたいことを一気にまくし立てると、携帯電話を握り締めながら慌てて帰って行く。


「智帆!」

俺が呼び止めるも全く見向きもせずに走り去る智帆。



「遥ちゃんいいよ。きっと彼氏だと思うから。昨日から喧嘩してたみたいだし」

「でも…」

「いいの。今日はあたしが智帆に無理やり頼んだの。遥ちゃん呼んでって。だからいいの」


ふわりと優しく笑う未来。

その笑顔を見て俺は思わず笑顔になるが、妙に照れ臭くて下を向いてしまった。
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