Promise at Christmas
「藍ちゃん覚えてる?」

「藍?誰?」

「今日、ずっとお前の横に座ってた子だよ」


真崎に言われて初めて彼女の名前を知る。

耳障りな甘い声が記憶に新しい。


「それで頼みって言うのは、明日藍ちゃんと2人で会って欲しいんだ」

「俺が?何で?」

「藍ちゃんがお前のこと気に入ったみたいで。どうしてもってお願いされちゃったんだよ」

「悪いけどパス。俺、そういうの苦手」

「頼むって!俺のクリスマスが掛かってるの!仲を取り持つ代わりにクリスマスに可愛い子を紹介してくれる約束になってるんだよ」


やっぱり…。


根っからの面倒臭がりなこの男が人の恋路に進んで手を貸す訳がない。

真崎が自ら動くのは私欲が絡んだ時だけだ。


「やだね。そんな暇があるなら家で寝てた方がいい」

「おい!報告書とか残業して手伝ってやったの誰だっけ?遠くに行く前に友達孝行くらいしてけよ。それにもうお前の携帯の番号、藍ちゃんに教えちゃった。後はそっちでうまくやってよ。よろしく!」

言いたいことだけ言って真崎は電話を切ってしまう。


ぷつり、と音を立てて切れた携帯電話。


ただ黙ってそれを見つめる俺。

そして、ぎゅっと握り締めた。


…あと3日。

このまま、未来に会うことはないのだろうか。
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