Promise at Christmas
会社を出て車を停めた駐車場まで歩く間、着ていた黒いコートにはらはらと空から降り落ちる白い雪。


各地からは雪の便りが聞こえてくる季節。

穏やかな天気が続き、雪とは全く縁のない日を過ごしていたこの地域でもようやく月並みに雪が降り出した。



雪の白さに魅かれて右手を差し出してみる。

ふわりと舞い降りた雪。

次の瞬間には手の平の中で水滴へと変わってしまった。


降っては消え……

降っては消え……



「あと一週間か…」

真崎に言われた言葉を思い出し、俺は1人呟く。



そう。

1週間しかないんだ。



君の姿をこの瞳に焼き付けておきたいと思うのは俺のエゴなのだろうか。


傍にいられるのもあと僅か。

指先に触れると一瞬にして消えてしまう雪みたいに、この想いが消えてしまわぬように。



左腕にはめた時計に目をやり、途中、止めた足を進めて先を急いだ。
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