Promise at Christmas
男と視線が絡む。

それから逃れようと俺はさっと視線を下に逸らしてしまった。


「じゃ、俺はこの辺で失礼します。未来、夜に電話する」

「あ、あたしも外まで…」


声が聞こえ、俺が顔を上げた時には向かいにいたはずの男の姿は消えていて、お揃いの紺色ブレザー…指定制服に身を包んだ2人の男女が肩を並べて歩いている後姿。



残されたのは俺の横で頬杖をつきながら料理メニュー表を眺めている智帆と、俺の2人だけ。


「未来は帰ったの?」

未来の鞄が置いてあるのを知りながらも、俺はわざとらしく智帆に聞く。


すると智帆は少し怒った顔で俺を見た。

「愁(シュウ)君が挨拶したのに見向きもしないんだから!失礼だよ」

「愁ってさっきの?」

「そうだよ。未来も今日、愁君と一緒に帰れて喜んでたのに」

智帆は苛立っているからかトントンとテーブルを指で叩いている。



"未来も喜んでたのに"

この言葉を聞いても俺はさほど驚きもしなかった。


男を見つめて嬉しそうに幸せそうに笑っていた未来。

今まで見たことのないくらいの笑顔。



聞かなくても分かる。

彼女があの男を好きなんだろうということは。
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