゚。*゚甘い魔法にかけられて゚*。゚
「文庫本とミルク味」
◆◆◆
「あーちゃん、おっかない顔してどうしたの?」
「可愛い顔が台無しじゃ。」
夕ご飯の食卓で、ぶっちょう面の私を見てお祖父ちゃんとお祖母ちゃんが心配そうに言う。
「嬉しいことと嫌なことが同時にきちゃったの。」
お祖母ちゃんの十八番の筑前煮を黙々と食べながら、そう言った私にお祖母ちゃん達は顔を見合わせていた。
原田くんの告白に、先輩とケンカ。
恋愛経験が皆無に近い私が、こんな同時に2つの問題を解決できるはずがないじゃない。
「彼氏とケンカでもしたのかい?」
「ぶっΣΣ!お祖母ちゃんっ!」
「ほら、当たりじゃ。」
「もう、お祖父ちゃんまでっ!」
ケンカはしたけど、
先輩は彼氏じゃないもん。
でも、ケンカしたくない人とケンカしちゃった。
すごく複雑な気持ちで、どうしていいか分かんないよ。
「あーちゃんもそんな年頃かぁ。」
のん気なお祖父ちゃんにお祖母ちゃんが湯のみにお茶を注ぎながら、懐かしげにこう話す。
「昔は私たちもよくケンカしましたねぇ、お祖父さん。」
「そうじゃった、そうじゃった。」
「お祖父さんとたい焼きを頭から食べるかしっぽから食べるかでケンカしたこともありましたねぇ。」
「結局、半分こにして好きな方を食べたんじゃよな。」
たい焼きの食べる方向だけでケンカ?
ふふ…可愛いなぁ。
それにしても今すごく仲良しのお祖父ちゃん達がケンカばっかりしてたなんて。
びっくりだけど、いつもどうやって仲直りしてたんだろう。
「お祖父ちゃん達、いつもどうやって仲直りしてたの?」
すると、お祖父ちゃん達は2人顔を見合せてにっこり笑うと、リンゴをうさぎの形に切りながらお祖母ちゃんが教えてくれた。
「ふふ…それはねあーちゃん…――――」