゚。*゚甘い魔法にかけられて゚*。゚
「杏、俺とお前が一番最初に会った時のこと覚えてるか?」
フェンスと先輩に挟まれたまま、私は先輩の問いにコクンと頷いた。
覚えてる。
昨日あった出来事のようにはっきりと。
シトシトと雨のふる放課後、気分の乗らない私は早めに図書室を閉めようとしてた。
そこへ先輩が声をかけた。
『もう閉めるのか?』って、ちょっと低い声でぶっきらぼうに。
先輩を一目みた瞬間、私は時間が止まったような錯覚に陥ったんだ。
背が高くて、ポケットに両手を突っ込んで戸ににもたれて…私を偉そうに見下ろしていた先輩。
王子様のみたいに顔が整っていて…
二重で切れ長の綺麗な目で見つめられて。
今思えば、完全に一目惚れしていたのかもしれない。
「すごく俺様でしたよね。」
私がそう言って見上げると、先輩はちょっと照れくさそうに笑った。
初めて会ったというのに、先輩はとんでもない発言で私を驚かしたんだ。
『可愛いな…お前。』
その発言のせいで私は先輩をヘンな人って思ってしまったんだよね。
だって、私を可愛いなんていう人いなかったもん。