゚。*゚甘い魔法にかけられて゚*。゚
「杏、お前は今の自分が好きか?」
「…分かりません。」
今の自分自身が好きかどうかなんて、
そんなの分かんない。
今の自分が本当の私なのかさえ、
分からないのに。
「よし、とりあえず明日から
俺と一緒に登下校すること。」
「はい!?」
た、高原先輩と登下校!?
そんなのあり得ない。
「そんな…目立つ事したくありません。」
「目立たねーよ。」
「先輩が目立たないわけないじゃないですか。」
「はぁ?」
高原先輩は、全く理解できないといった顔で首を傾げた。
先輩は自分のこと、分かってない。
女子からどれだけ騒がれてるのか、分かってない。
「とにかく、明日から毎日迎えにいくからな。」
「…はぃ。。」
もの言わせない高原先輩の口調に、私は渋々返事した。
すると先輩は意地悪な笑みを浮かべて、
「俺のこと、嫌じゃないんだろ?」
なんて嫌みを言う。
なのに、ちょっと胸がキュンとなってる私がいた。
もう、このキュンとかって何よ。
そのあとは、半強制的に携帯のメールアドレスと番号を交換させられた。
数少ないアドレス帳のた行に【高原 葵】の文字が仲間入りした。
その文字を見つめたまま、ちょっと高鳴る胸の鼓動が落ち着くのを待っていた。