゚。*゚甘い魔法にかけられて゚*。゚
「ほら、チェックしたなら貸せよ。」
ヒョイッと本を奪った先輩は、“帰るぞ”とだけ言って図書室を出て行った。
え、え、ちょっと待って…
私急いで片づけをして、図書室の戸に鍵をかけると職員室に鍵を返して、下駄箱へ走った。
「…あっ。」
下駄箱から靴を取り出した時だった。
校舎を出たところにあるハナミズキの木の横にいる先輩を見つけた。
靴に履き替えると、慌てて先輩のところへ行こうとした―――・・
駆けだそうとした私の足がピタッと止まる。
先輩はひとりじゃなかった。
一年生のネクタイをした可愛い女の子が
恥ずかしそうにうつむき加減にしてそこにいた。
真っ赤になった顔で時折笑いながら、背の高い先輩を見上げる。
「―――…好きです。高原先輩っ…。」
離れていても聞こえてしまった。
分かってた。2人の場面をみた瞬間から。
告白の場面だって。
私は勢いよく走り出した。
「おいっ!…杏っ!」
走って通り過ぎる私の姿に、先輩の呼ぶ声がした。
私は立ち止まることなく、走り続けた。
やだ…やだ…
やだよ…っ。