゚。*゚甘い魔法にかけられて゚*。゚
「杏ちゃんっ…。」
「えみ…さん?」
一階へ降りて、お店の方へ出た時だった。
お店を閉めるのか、カーテンを閉めていたえみさんが私を呼び止めた。
「お邪魔しました。」
「ううん。ねぇ、杏ちゃんちょっといいかな?」
「?」
私はにっこり笑ったえみさんに連れられ、お店を出た。
何だろ…?
不思議に思いながら、街灯やいろんなお店の明かりで照らされた道をえみさんと並んで歩く。
商店街を抜ける手前で、えみさんはお肉屋さんでコロッケを4つ買っていた。
「昔からあそこのコロッケには目がなかったのよね~。あんなにいい匂いさせてたら誰だって食べたくなっちゃうでしょ?」
なんて言いながら、えみさんはすごく幸せそうに熱々コロッケを頬張っていた。
美味しそうに食べる人だなぁ…。
お祖母ちゃんも、私がこんなに美味しそうに食べたら嬉しいんだろうな…。
「杏ちゃん、葵のせいでしょ?」
「え…?」
ペロリとコロッケを平らげたえみさんは、指についてた油をコロッケの包み紙で拭いながら、突然聞いてきた。
先輩のせい?
「杏ちゃんが元気ないの。」
ああ…そういうことか。
違う、先輩は悪くないんですよ…
私が勝手に…。
私は必死に首を横に振った。