僕の上司は彼女です。
辟易と、馬鹿につける薬はないと言わんばかりにそう吐き捨てられる始末。
「…すんません…」と、橘さんと同じぐらい小さく小さくそう呟いた。
そんなやり取りを、もしかして寝てる!?って疑いたくなるぐらい気配を消して見守ってた社長が「よし!」と声をかけ、目を開くと立上がりチカの横にきた。
「チカ、どう思う?」
「そうですね…。
先方も間違いであることも、こんな値段でできないことぐらいわかっておいでだと思うんで、あからさまな嫌がらせでしょうね」
「だろうな。
うちにケンカ売るとはなかなかいい度胸してるじゃないか…なぁ?」
社長は俺が間違えた見積書を手に取り、橘さんをチラッと横目に見た。
橘さんも眼鏡をクイッと上げると
「僕もそう思います。
やたらと大きな声で言いふらすかのようでしたし」