僕の上司は彼女です。

あんなに独り占めしたかった笑顔だったのに。


ずっと側で見ていたくて、俺がずっと笑わしてやるんだ…って思ってたのに。


最後の方、チカは泣いてばっかだったな。


明確な『サヨナラ』なんてないまま俺たちは終わった。


それが今ごろこんな形で再会するなんて……。


いつしか始まった入社式の間中、チカをチラチラと気にしながら俺の頭の中は過去と今を彷徨っていた。


だけどチカは俺なんか眼中にないように、前で挨拶を述べる社長を真っ直ぐ見ていた。


あぁ、そうか…。
散々傷つけたんだもんな…。俺の顔なんか見たくもないし、思い出したくもないか。


チカがもう俺との過去を忘れたんなら、俺も…そうしよう。


そう自分の中で踏切りをつけると、俺も真っ直ぐ前を向いた。
< 53 / 268 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop