僕の上司は彼女です。
俺を視界に捕らえた社長は苦笑いを浮かべ、「まいったな…」って呟いた。
その「まいった」の意味は、2人の親密な間柄を俺に見られてバツが悪いんだと思っていたのに。
「誰にも言うなよ?
チカ、下戸(ゲコ)なんだよ。
酒、飲めねぇんだ」
社長の口から出た言葉を、俺は理解できなかった。
だって、チカは…昔っからザルで…何杯飲んでも酔うなんてなかったのに…そのチカが下戸!?
プチパニックを起こす俺を置いて、社長は話を続けた。
「飲めないんだけど、今日は歓迎会だろ?新人たちのお酌は断れないっつって…。
雰囲気悪くしたくなくて飲んだんだから誰にも言うなよ?」
社長はそう釘を刺すと、チカを抱き上げてタクシーに向かった。