風のワルツ
「……」
いつまでたっても喋らないお父さんを見て、話してはいけなかったかもと思った。
けど……
「今日、駅で会ったの。…私のこと、昔から知ってるって言ってた…」
さすがに切り出してしまった以上、引くわけにもいかなくなってしまった。
「…………それは…人違いじゃないか……?」
「…お父さん…さすがにその演技はバレバレだって…」
「……」
「気になったまま死にたくないの。未練とか…残したくない……お願い…」
私はずるい。
こんなこと言われたら、普通は喋ってしまう。
「…お父さん…」
「少し時間をくれないか…母さんとも話して……それから、ちゃんと話すから…」
「…ん…わかった」
お父さんは…もしかしたら泣きそうな顔だったかもしれない……
なんだか、複雑な感じがして……触れないほうが良かったかもと本気で思った。