風のワルツ
怒った…はずだった…
のに……
「……あんた…泣いてんの?」
「……」
後ろはフェンスで、そこに背中を強く押し付けられてるから顔は見えないけど…
私を抱きしめてる手が震えていて、少し聞こえる息遣いで泣いているのがわかる。
思わず溜め息がでる。
「……泣きたいのはこっちだっつうの……
もう少し…もう少しだったのに。
なんであんたが勝手に自殺止めて泣いてんのよ…」
「…んでは…こっちのセリフだよ。
いつの間にこんな風になっちゃったんだよ…
必死に探して…やっと見付けて…ようやく近くに来れたのに…なんで死のうとしてんだよ……俺はっ!…俺は大事なものをほって置けるほど心が広くなければ、強くもない!!
目の前で逝かれたら…本気で壊れるんだよ……」
……いいセリフなのかも知れないが…私の頭にはハテナがいっぱい…
一つ言えることは…
「…じゃ、なおのこと…私を捨てろ。
あんたが私の知り合いだから教えてあげるけど…
……私はあと一ヶ月で…結局死ぬんだよ」
「!!」
「…病名は知らない、知ろうとも思えない。
でももう無理…いつ死ぬかもわかんない……
あと一ヶ月を空気のように過ごす…かと言って生きる意味もない…だから自殺を考えた。
…今手放せば…少しはマシかもよ?」
「………」
「…今のうちに私を忘れなよ……まだ間に合う……少しはマシだと思わない?」
ここまで言えば手を離すと思った。
だけど私を抱きしめてる手の力が強くなって…
「あいたたたっ!痛いっ!」
「……マシ…ねぇ…
ふざけてんなよ…生きる意味がないから自殺とか…
そんなに生きる意味が欲しいならくれてやるよっ!!
今日からお前の生きる意味は俺だっ!!
俺のために生きろっっ!!」
「意味わかんない!何よそれ…つか私は生きる意味が欲しいなんて一言も…」
「欲しいとしか聞こえないなっ!決定!!
俺がここにいる限りはお前は死ねないよ?」
「っっ!!わっわかったから…
頼むから腕離せーーっ!
背中が痛ーーーーい!!!」