それは、恋よりも甘く
「小高さん…。治療をすれば、2年の寿命を5、6年に伸ばせる可能性だってあるんですよ?あなたは若いんですから…」
「いえ、もういいんですよ。」
医者に向かって、にこりと笑う。
俺の本気を感じたのか、医者は黙った。
「生き延びても、やりたいこともないですし、一緒にいたい人もいません。それに、お金もありませんし。」
俺は笑顔のままいった。
これでいいんだ。間違ってない。
…今の俺に、治療してまで生き延びる価値なんてないんだから。
「お話は以上ですか?じゃあ俺、用事あるので。」
嘘。
ホントはないけど。
でももう帰りたいのは本当だ。
「あ、ちょ、小高さん…っ」
引き止めて説得しようとする医者を無視してブレザーを着て、鞄をもつ。
「じゃあ先生、失礼します。」
俺はその言葉と未だ諦めない医者を残して診察室を後にした。