蒲公英
Erinnerung
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僕と沙羅のつきあいには、始まりにも終わりにもちゃんとした言葉はなかった。
だけど僕の愛は充分すぎるほど伝わっていたと思う。
というより、僕の一方的な想いを押しつけていただけのような気がしてならない。
彼女はめったに愛を語ってはくれなかった。
それでも僕らはつきあっていたはずだった。
忘れもしないあの日。
毎日ほとんど強引に沙羅を家まで送っていた僕に、あの暑い初夏の日、彼女は言ってくれた。
「あがっていく?」
出会って二ヶ月が経とうとしていた。
僕は願ってもないチャンスに舞いあがり、必要以上に何度も頷いた。
初めてのチャンスなのだ。
きちんと告白して、できればつきあいたい。
少なくとも好印象は与えておきたい。
そう思った。
本当に、紳士的に振る舞うつもりだったんだ。