蒲公英
しかしふたりがそれを理由に別れるのは初めてでもなんでもない。

いい加減、そこは妥協してもいい頃だと思う。




「だからせめて食えるもんつくれるようになったらヨリ戻してやるって」

「誰があんたなんかっ!」

「なんだよ?嫌なのかよ!?」

「当たり前でしょ」

「んだと!?お前みたいな気の強い女、俺以外に相手にしてくれる奴なんかいねぇっての」

「はぁ?勘違いしないでよね!これでも私、今結婚申し込まれてるんだけど!」

「え?」




大樹の顔色が変わった。




「それ、マジで?」




言葉を失った大樹の代わりに僕が尋ねる。

あかりはバツが悪そうに顔を背けた。

その仕草が、紛れもなくそれが事実であることを物語っていた。





勢いで言ってしまったものの、本当は大樹には言わないつもりだったのだろう。

あかりはあきらかに大樹によかったな、と祝福されることを恐れていた。
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