蒲公英
話してみれば稀沙は意外にも普通の女の子だった。

周りと多少距離を取ろうとするものの、頭のよさを鼻にかけたり、気取った態度をとることはしない。

ちょうど夏休み前半の夏季講習の頃で、赤点に泣くあかりの補習対策に辛抱強くつきあってくれた。

ギリギリだった僕と大樹も稀沙のノートにかなり助けられた。






大学に入って初めての長期休み。

僕らは当然のように旅行の計画を立てていて、当然のように彼女もそれに誘った。






未来の親父さんの知り合いのコテージを借りて、一週間海三昧。

未来と春日が毎年利用している場所ということもあり、特に不便することもなく僕らは休みを満喫した。




「海だぁ!」




定番のセリフを叫びながら冷たい水に飛び込む。

男3人で遠距離のタイムを競ったり。

全員でビーチバレーを追いかけたり。

騒ぐ彼らを尻目に、岩影で沙羅に向かって愛を囁いたり。
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