蒲公英
そして最終日の夜、みんなで浴衣に着替えて海で花火大会を開催した。

手持ち花火に始まり、変わり種。

砂浜に潜ってしまい、不発に終わったネズミ花火にまでキャーキャー騒ぐ。

締めは当然打ち上げ花火。

いくつも同時に火をつけ連発した。




「湧己。見て」




初めて見る沙羅の浴衣姿はこの上なく美しかった。




「来年はふたりで花火大会に行こう?また浴衣着てさ」

「そんなに気に入ったの?着るの大変なんだよ?」

「じゃあ俺が着付けてあげる」

「できるの?」

「…脱がせる方なら喜んで」

「変態」




沙羅が笑って駆けていく。

そんな後ろ姿さえ愛しくて。

僕はよっぽど締まりのない顔をしていたのだろう。






気がつけば稀沙が呆れ顔で僕を見つめていた。




「湧己…」

「言いたいことはわかるから皆まで言うなよ?」




男ならもっとしゃんとしろとでも言われるかと思い先手を打つ。

だけど稀沙はそうじゃないと首を振った。
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